非接地系統にEVT, ZPDを追加設置したときの地絡電流のオーダーと影響

一般的に国内の高圧6.6kV系統は非接地方式となっており、地絡検出のために需要家設備側ではZPD(コンデンサ形地絡検出装置)が用いられる。電力会社の配電用変電所側ではEVT(接地電圧変成器)が用いられるが、JEEAの解説でも触れられているとおりその理由は以下の通りである。

  1. 需要家側でもEVTを使用することで系統の中性点が多重接地となり、保護継電方式に影響を与える(系統全体の地絡方向継電器(67)の整定値に影響を与えるという意味と思う)
  2. 絶縁抵抗測定による地絡時の故障点の探索が困難になる(EVTの中性点が直流抵抗を介して接地していることになるので、EVTを切り離さないとメガが0になるという意味と思う)

上記のJEEAの解説内に記載があるが、EVTは2次側をオープンデルタ結線とし、その間に制限抵抗を接続する。一般的に6.6kV系統で10kΩでの中性点接地となるように制限抵抗の値を選定するようです。要するに「非接地系統」ではあるが、実際にはEVTを介して高抵抗で接地された状態と言える(EVTのメーカ仕様書を見ると、EVTの2次側はスター結線、3次側がオープンデルタ結線となっておりJEEAの記事を読むときには読み替えが必要)。

以下需要家側にEVTを設置した場合の地絡電流への影響の度合いと、ZPDとした場合にそれがどの程度緩和されるかについて考察した。

EVTの場合の地絡検出への影響

(以下単純化のためにケーブルの対地間静電容量は無視した)

EVTの場合はJEEAの解説のとおり、中性点を10kΩで接地した状態と等価になる。図-1の通り需要家A内にEVTを設置し、配電用変電所母線で地絡事故が発生した時の地絡電流は、

  • EVT設置前の地絡電流 = i0
  • EVT設置後の地絡電流 = i0 + i1 = 2i0

となり、EVTを追加で設置する前の地絡電流の2倍の電流が流れることになる。

図-1 需要家側でEVTを設置した場合の影響

また配電用変電所につながる需要家がB, C・・と増えていくたびに故障電流の大きさが3倍、4倍・・となりそのたびに配電用変電所側の地絡方向継電器(67)の整定値の変更が必要となる。また需要家側も地絡方向継電器による負荷回路の地絡保護が必要となるが、配電用変電所の高圧需要家でEVTが設置されるたびに整定値の変更が必要となる(よって現実的にはこの様な対応は出来ないため、系統として成り立たない)。

ZPDの場合の地絡検出への影響

ZPDによる地絡過電圧検出の原理、結線図などはJEEAの解説の通りであるが、これも結局、コンデンサ(静電容量)を介して中性点を接地していることになるので、地絡事故時の故障電流への寄与はゼロにはならない。EVTとの大きな違いは、EVTは直流抵抗を介しての接地であるが、ZPDの場合はコンデンサを介しての接地なので対地間の直流抵抗は無限大となる(よって絶縁抵抗測定が可能となる)。

図-2の通り地絡電流 = i0 + i1となる。

図-2 需要家側でZPDを設置した場合の影響

地絡電流i0に関しては、

となる。

i1に関しては、コンデンサCa=250pFとCg=0.15μFの直列回路を介しての地絡回路となり、図-3のようになる(コンデンサの容量に関してはZPDの仕様書から引用した)。

図-3 地絡時の回路

このときの回路の合成キャパシタンスCは

となる。このときのインピーダンスZとi1は、

となり、i0より更に3桁値が小さいことがわかる。

まとめ

同じ系統内でEVTの設置台数を増やしていくと、完全地絡時の故障電流が2倍、3倍・・と増加していき、追加設置前の系統の地絡方向継電器(67)整定値へ影響を与えることになる。これをZPDとすることで、ZPD追加設置後の地絡電流の影響は当初の地絡電流より3桁小さい程度の影響(0.1%程度のオーダー)となるため、実用上は無視することができるということがわかった。

(ZPDの地絡電流を計算している等価回路にあまり自信がないが、間違えていたとしてもCb, Ccの寄与で寄与電流が3倍 or 1/3倍になる程度の影響なので、オーダーとしては影響が無いようには思う。。。)

参考記事

少し古いが日立評論に非接地系統のEVTの制限抵抗(CLR)値について記載があったので参考記事として上げておく。


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